桜月流の舞台装置は
「真田丸」でも大活躍
《空間工房タシブトフクシマ》
声咲く
2017年1月29日 日曜日
舞台のことと、「The MoN 桜月流」の改装のことで、
空間工房タシブトフクシマの田染さんと福島さんご夫婦とミーティング。
このお二人、毎回の大河ドラマでも、また朝ドラでも大活躍な
NHKの特殊小道具
を製作するお仕事をされているのです!
本当にセンスと職人技が融合した芸術家夫婦さんで、
桜月流は初期から、お世話になっています!
今回、桜月流も大河ドラマに参加させて頂きましたことがあり、
思い出話を話しているうちに、お二人から噂では聞いていた
「鉄火起請」や「馬上筒」のエピソードを詳しくお聞きできて感激!
「馬上筒」は、堺雅人さんが最後の戦いでお使いになった銃ですが
あの銃もいろんなカットのために、本物より少しだけ軽い形状で
リアルに動く・使えるモノをお作りになられていました。
田染さんと福島さんの凄いところは、
ただ形だけのレプリカを作るというのではなく、
それがちゃんと動かなければいけない、という時の
お仕事をされています。
上記の「とと姉ちゃん」などは、昭和に生まれてくる
様々な電化製品/トースターや洗濯機などを
撮影中に動かさねばなりません。
本当にパンが焼けねば、いけないわけです。
昔の電化製品は、もうそんな部品も現在にはないので、
全部を似せて作るのですが
それが動かねばならないのですから、避難の技。
美術センスと、技師技術者としての力が必要で
しかもそれを撮影の要求に応えるサイズ感や軽量で納品するという
魔法使いのような仕事なのです。
有名な映画の、「あのゼロ戦も作ったんだよ」とか、
どうやって!? みたいなことの連続。
きっと息子さんたちは、お家やアトリエが玉手箱みたいで
本当に楽しいだろうなと思います。
さて、大河ドラマ『真田丸』の鉄火起請のシーンを
覚えておられますか?
第12回「人質」で登場する戦国時代に行われた裁判の一種で、
争っている二人が神前で焼けた鉄を手でつかみ神意を問うことで、どちらが正しいか判断する。
その時、正しい者は神の御力によって火傷はしないと信じられていました。
文献で、私もこの鉄火起請のことは読んだことがありますが、
実際にドラマの中で見るのは、はじめて!
おぉ、こんな風だったかもしれないと、
ドキドキしてオンエアを拝見したのでした。
大河ドラマのウエブサイトの中でも、鉄火起請を
詳しく風俗考証の佐多芳彦先生がご解説なさっています。(お写真はここからの引用です。)
http://www.nhk.or.jp/sanadamaru/special/subject/subject11.html
上記のご解説によれば、
「鉄火起請は、神の息がかかった護符である
牛王宝印(ごおうほういん)の紙を使って鉄を握り、
ある程度の距離がある場所まで運ぶことになります。
正しければ神が味方についているので、火傷はしないというわけです。
(中略)生きるか死ぬか、まるで決闘のような鉄火起請ですが、
神判の場を作り、演じていただくと、空気感がわかります。
例えば、堺雅人さんが演じる信繁の結界への入り方ですが、
持っていた刀を外して武装を解除します。
手を洗い、口をゆすぎます。俗人の武士としてではなく、
一人の人間として身なりを正し、わが身を清め、
真剣に神事に挑む姿勢を感じました。
神様に対して立つ位置であるとか、居るべき場所であるとか、
中世に生きる人として、堺さんをはじめとした
出演者の方々はきちんと理解し、演じてくださいました。」
とても印象的な、すごくいいシーンでした。
その、鉄火起請の燃える鉄を、田染さんと福島さんが
製作されたと聞いて、もう超感動しました。
さらに、牛王宝印!
私も、オンエアで鳥文字の牛王宝印だ!とすぐ、思いました。
鎌倉時代、義経が兄に許しを請うために書いた腰越状も
この牛王宝印の裏に書かれていて、
自分の身の潔白を神にかけて誓うと
命がけで嘆願しました。
この牛王宝印には、もし、嘘で誓ったならば
神が死をもたらすであろうという意味を含む印なのです。
だから、命がけの請願をする時に使われていました。
そんな牛王宝印が『真田丸』の鉄火起請の際に、
使われていたので
神事として(神仏混合というべきかもですが)
行われていたなら、ほぉ、こうかもしれない!!と、
勝手に感動です。
しかし、このシーンでは、
双方の漁師さんたち、どちらが悪いという状況でもない事例なのに
役人側が命がけ(大火傷をする)の鉄火起請に
持ち込んでいるところへ、
信繁堺くんが身代わりに鉄火起請をやろうと割って入るようなストーリー。
神の前に出て、
三十郎との息もぴったりで手水して己を清めてから
堺くんが真言とともに、
印(手組)を組んだのがすごく良かった。
堺くんの印、本当に美しいんです。
あの、実践的な密教の印を
はじめて堺くんにお教えしたのは
私と松木くんじゃなかったかなぁ。
15年ほど、前のことです。
桜月流に剣で結界を張るという秘法を
さる密教の御僧侶がご伝授くださることになり
私、松木、石綱、弟の昌志の4名は
不眠不休断食7日間の籠り行満行を経て後、
求菩提山にて免許皆伝をお授け頂いたのですが、
私たちは、その御行に入る準備の修行で
はじめて印というものを教わりました。
この秘法は免許皆伝賜ったので、
私たちはその法を人にお授けすることを許されておりますが、
勿論、そうなって後のことですが、堺くんに印をお伝えしたことがあります。
指もすらりと長くて、とても美しく印が組める方で、
私と松木くんはビックリ!
私などは印を組むのをすごく苦労した人間でしたし、
松木くんは群を抜いて4名の中では一番上手だったのですが
それでも最も難しい印とされる転法輪を組むのには
何日も何日も寝ずに努力しましたので、
印の難しさは肌身で知っておりました。
密教の修行僧の皆さまは、印を自在に操られるというだけでも
神業と拝察致します。
(到底、にわか修行の我々とは全く違います。)
しかし、我ら4名の中ではダントツだった松木くんが
ものすごく努力してできるようになった転法輪の印を
堺くんは、その最初の日、うーむ グイっ!
と、すぐに組めてしまった。
確か、そうだったと記憶します。
それで、私たちの中で超ブーイングがおこりまして、
「なんで?なんで!? なんでできるのーー!?」
と、叫んだのを覚えています。
あの日、12話のオンエアを見て、
ほんのワンシーンでしたが、
美しい印だなぁと、
すごく感激して画面を拝見していました。
あ!話が印に行ってしまった。
その時の鉄のことを話そうと思ったんでした!
神事の作法を終えて、
さぁ神よ、答えを下し給え!
ということで、
牛王宝印の和紙を乗せた手の上に
激しく焼けた真っ赤な鉄がまさに乗せられる〜
「キャーーー!!」
の瞬間に、待ったが入るのですが。
ほっ。。。。
詳細ストーリーは(ご存知の方がほとんどかもしれませんが)
本編をご覧くださいませ。
という、そのリアルな焼けた鉄が、
どこからどう
タシブトフクシマの特殊小道具の
焼けた鉄なのか、わかりません。
それほど、リアルな焼き鉄。
鉄のように見える素材感、焼け感、炎な感じ、重さ、
どうやって出すんだ!?
LEDの要素もあるとおっしゃるので、
もういつもながら理解不能なマジックなのであります。
そんなお二人とのミーティングを終え、
今、新たな製作に向かっておられる
直虎と、次の朝ドラの特殊小道具の話をお聞きして、
その完成に向けての妥協なき努力の数々に頭が下がりました。
絶対に、次のプロフェッショナルは、このお二人がいいと思います!
大変な職業だけど、
美術系の子供たちにも、一つの夢を与える
すごいお仕事だなと思います。