八月十六日 五山の送り火(大文字焼き)
声咲く
2022年8月16日 火曜日
東京からはお山の大文字は見えませんが
ご先祖さまをお見送りする「送り火」といえば
京都 五山の送り火、大文字焼きですね。
今年は三年ぶりに点火されるとのことで
本当に嬉しいことです。
現代社会の中で
お盆行事がなかなかできなかったとしても
炎に浮かぶ大文字を見たら
「近くにいてくださったご先祖さまが
この火を眺めながら無事に天にお帰りになりますように」
と、心の中で手を合わせたいものです。
私が育った京都の上七軒は
左大文字のゆかり。
ですから、左大文字の火を盃に映して飲むと
願いが叶うと言われています。
私もよくおじいちゃんによく映してもらいました。
「蓮の白むし」のブログでも書きましたが
お盆の時期にはご先祖さまが喜ばれるように
精進料理のお膳とお団子やお餅類を
毎日お供えしますが、
今日、八月十六日にお出しする
最後のお膳には必ず
「あらめとおあげのたいたん」があがります。
東京では、あらめを見ることがありませんが
少し長いひじきみたいな乾物。
ひじきよりワイルドで、私は大好きです。
あらめは、まず、15分ほど水に浸します。
この時の「戻し汁」は最後に使うので
取っておきます。
精進料理なので、出汁は干椎茸でとり
ごま油で風味を出して炊きものにします。
必ず、お供え物の最後のお料理は
これです✨
そして、おしょらいさん(お精霊=ご先祖さま)を
お送りしたら、「あらめ」の戻し汁は、
パーっと玄関の前にまきます。
これは、よりついた法界さん(無縁仏さん)に
離れ去って頂くための“おまじない”だと言われています。
絶対になさねばなりません。
だから、東京でも私は「あらめ」を
取り寄せています。
でも、これって日本人の
優しい心掛けの姿だなと思うのです。
ご先祖さまと一緒について来た法界さんにも
ちゃんと「水の子」というお供えを準備してさしあげます。
蓮の葉の上に、賽の目にした胡瓜と茄子と、
洗い米を加えて混ぜて乗せたものです。
しかし、武士の作法と同じく
「礼を尽くして隙を見せず」なのです。
法界さんにも「水の子」でもてなします。
しかし、ご先祖さまより優遇しては
より憑かれてしまうので
ご先祖さまには毎日精進料理をお出しする。
そして、最後の「あらめとおあげのたいたん」
をお供えして、送り火によってご先祖さまが
天に昇ってゆかれたら
法界さんにもちゃんと出ていただけるように
「あらめのもどし汁」を玄関にまくのです。
結構、磯の強い香りがします。
これを、「追い出しあらめ」とも呼びます。
さて、昨夜の五山の送り火、
点火の前後は、大変な雷雨で
騒然としていたようですが…
点火の時だけ雨が上がり、
そして、火はなんとか持ち堪えて
燃えてくれたとのこと。
本当に、令和四年の世界を暗示するような
送り火だったと思います。
でも、天は我々をお見捨てにならず
ご先祖さまの昇りゆく道を照らしてくださいました。
感謝と共に、何か深い学びがある気がしています。
そして、お稽古場の鬼灯も昨日、撤饌しました。
鬼灯をこの時期お供えしていたのは
迎え火・送り火の「火」の見立てです。
ご先祖さまが迷わずに降りてきてくださる
しるしとなるように、鬼灯はお供えされます。
仏教の盂蘭盆の思想が入ってくる以前から、
日本には先祖を敬う祭祀がありました。
ですから、作法にこだわることより、
この時期、ご先祖さまに心の中で手を合わせるような
気持ちこそが、大切ではないかと感じています。
ほんの何十世代も遡れば、
みんな同じご先祖さまに繋がります。
そう考えると、会う人会う人、みな
同じご先祖さまの末裔。
日本は神さまから血統が繋がっている
神話の国ですから、
同じく、みな神さまの御血筋の末裔。
五山の送り火を中継で見ながら
そんなことを感じていました💫