パリ ユネスコ
ツルギ、平和へ
ササグ|PRAY
桜月流美剱道/O-Getsu Ryu は、2009年、パリのユネスコ本部文化局より「武器を武器として扱わないこと。言語によらない
情感の交流。そして、それが美しいということ」という評価を得、文化の多様性に貢献しているカンパニーとしてパリ・ユネスコ本部文化局より選定を受けました。上文は、2008年当時、ユネスコ事務局長補佐フランソワーズ・リビエール女史による「文明間の対話」記念事業の趣旨説明に寄せられた言葉であり、ここにユネスコ世界会議に招聘されて舞台作品「TSURUGI〜剱〜」を1500名の各国大使、関係者の前で披露。3万人を動員したヨーロッパ公演ツアーの締めくくりとすることとなりました
呼吸をあわせ、互いのエネルギーを浴びせあいながら増幅させる桜月流の剱には、赤裸々な魂のやり取りがあり、心が清らかになる祓いが存在します。ツルギは神器であり武器です。芸術の中でその器をどう扱うかは、人の中にある魂の徳の発動によって決められます。平和への祈り。それは、桜月流が目指す技芸・パフォーマンスの根源です。古えより、技芸や芸術には祈りがありました。先人の教えに少しでも近づいてゆきたいと考えています。
ユネスコは<文化と教育と科学>で、世界に平和をもたらすことを考えている組織であり、世界遺産もここで制定されます。「戦争を起こさない世にするためには文化の多様性しかない」、その象徴的なグループとして我々桜月流を選んでくださったことを、文化の多様性プロジェクトの冒頭式典にてユネスコ文化局長より、スピーチを頂戴しました。そこで発表した作品が『TSURUGI〜剱〜』です。我々にその象徴性がある主な理由としては、「武器を武器として扱わずに芸術へと昇華したグループ」があげられ、その「自国=日本の伝統と革新の融合性、その美しさ」という点についても賛辞のお言葉を頂きました。これは、本当に光栄なことであり、身の引き締まることでした。
〈世界平和と文化交流〉
このようにして桜月流がUNESCOとの深い関わりを持つまで、この機関が実際に何をしているのか、我々自身よくわかってはいませんでした。当時、松浦事務局長の参与を勤めておられた服部英二先生にで出会った私たちは、先生よりユネスコのことを丁寧に教えて頂くようになりました。服部先生は世界遺産第1号の制定委員のお一人です。私たちには多くの学びがありました。
戦争が起こる時、国と国の諍いとしてどちらの大義も譲流ことができず、国民全土が巻き込まれてゆきます。しかし、その国の人と人が直接に会い、互いの国の音楽を聴いたり、その国の美味しく面白い食文化に触れたりたら‥‥その国の人々をリスペクトできます。好きになります。友達になれます。
どの国を見渡しても、その国に伝わる民族的な音楽やリズムや踊りや祭祀、ひたむきに祈る心が映し出されるような文化があります。それらは、どれも美しくて、このような素晴らしい文化を持っている他国の人々に対して、我々は自然に尊敬の念が生まれてくるものです。そこにはその国の風土感覚があって、その空、風、土、森、川の気配を感じます。
台湾奥地の山岳民族の踊りは美しく、アフリカのリズムは日本人には刻めない。コルシカ島の伝統ハーモニーには神秘だし、アブ・シンベル神殿に春分秋分の日に朝日がまっすぐに入る英知には頭がさがります。「日本もすごいけれど、外国もすごい!地球って宇宙に誇れる星だ。」と、そんな風に思えてくる。だから、思うのです。その人をリスペクトしたり好きになったら、その国を攻撃することなんて、その文化が絶えることなんて考えられないと。
桜月流は、ユネスコから評価されるまで、自分たちの技芸のそういった価値を、ちゃんと自分自身で認識できてはいなかったように思います。しかし、この出会いによって、「文化力にこそ、平和のカギである」ということを心から理解できるようになったのです。
今、私たちに必要なのは文化力です。特に多様性のある文化です。特化した強さ、生命力、貫く信念、そういう純粋でひたむきな精神性が、美しいものを生み出すのだと私たちは思っています。
人が美しい技芸や音楽や自然界の風景に触れている時、戦争をしようと思うでしょうか。
戦争になれば、人は皆、家族のことを思って、愛のために戦います。でも、その愛を戦争に使うのは哀しすぎます。だから、ユネスコが提唱する通り「いい文化」で心を満たしましょう。文化力という平和のカギでお隣や世界と繋がってゆきましょう。桜月流もそのように活動してゆきたいと思います。