資生堂『花椿』
WOMAN 取材
2014
桜月流について
美しく颯爽と生きる女性、
時代をリードする “ WOMAN ”
剣術には、なぜかある種の官能性を感じるが、
その理由を明らかにしてくれたのが、
400年の空白を経て甦った伝統技芸、“美剱舞” だった。
その体系をつくり上げたのは、わずか14歳で祖母から
“芸能神事”としての歌舞を受け継いだ神谷美保子さん。
剱を “戦う武器” ではなく、人と人とが交わる
“調和の芸術” とした「剱舞」は、ユネスコの推薦を受け、
今や国際交流の架け橋になろうとしている。
歌舞に剱を組み合わせる動機となるのは、
子供の頃、祖母に教わった「牛若丸」の精神。
“人の魂の徳を発動させる剱の本質” を見て、
むしろ祈りの道具としての剱で舞うことを思いつく。
剱で空を切る激しくも崇高、まったく無駄のない
機能美は、著名な物理学者をして
「自然界の花が咲く動きと全く同じ」と言わしめた。
自然と謙虚に対峙し、自然界のリズムや呼吸や
ざわめきをなぞるためにこそ、剱の舞で “気配”
そのものを表現したのだろう。
どちらにせよ、そこには神の啓示を感じる。
たとえば「十六夜」という舞を見てほしい。
祖母から「人はみな何かの天才。
その “何か” を探すのが人生」
という教えを受けた人の剱舞は、まさに天才の仕事。
振りかざす剱の先が宇宙と繋がるようにすら
感じるはずだから。
Photo by Yasutomo Ebisu
Hair&Makeup/ Reiko Ito(SHISEIDO)
文・齋藤薫=美容ジャーナリスト/エッセイスト。
多数の連載を持つほか、記事の企画、
化粧品のアドバイザーなど幅広く活躍。