佐治晴夫先生から<br>桜月流美剱道に - O-Getsu Ryu | 桜月流美劔道

佐治晴夫先生から
桜月流美剱道に

桜月流について

 桜月流美剱道とはよく名付けたものだ。宗家、神谷美保子氏は、幼少の頃、京都北野で、祖母から芸能神事としての歌舞を伝授され、その後、大学の芸術学科で学び、1995年7月7日に創流、今年で12年目を迎える。
平安時代以降、花といえば「桜」である。そして室町時代、能楽を大成させた世阿弥の能楽論集「風姿花伝」に書かれているように、“花と、面白きと、珍しきと、この三つは同じ心なり” を現代に創出させたのが、桜月流の舞台である。
一方、月にこれほど想いを寄せてきた民族は日本以外には見当たらない。満ち欠けを暦として利用してきた民族はあるが、それぞれの月の位相に、人生の哀歓を重ね、美しい詩情を形成できたのは、日本独特の気候風土に起因するものと思われる。桜月流の剣舞いには、常にその哀歓が漂う。
それは、宗家が歌う清澄なヤマト歌によって、一層、引き立てられ、他に類をみない幻想の世界を垣間見せてくれる。外来語にはない日本古来の音律に彩られた雅語による歌唱である。
それらに加えて、剣はもともと両刃の直刀であることから、戦う武器というよりも、人と人、人と自然を調和させる聖なる器としての意味をもつ。
桜月流美剣道とは、まさに、この「花」と「月」と「剣」を美しく調和させながら、風のように舞い、しかも、音から始まり音に終る剣の光響で縁取りされた剣舞いである。
ここで、音を「鳥」であると読み替えれば、まさに、日本人の文化的伝統の根源をなすもの、四季が織りなす美しい自然に投影された人の心の“あわれ”、すなわち、「花鳥風月」の具現化としての芸術であるといえるだろう。
すべてにおいて調和を重んじる日本古来のすばらしい精神性を世界の平和に結び付ける今後の活躍に期待したい。

佐治晴夫(理学博士・宇宙物理学者)

鈴鹿短期大学学長。元NASA 客員研究員。東京生まれ。東京大学物性研究所、玉川大学教授などを経て04年から現職。量子論に基づく宇宙創生理論、「ゆらぎ」研究の第一人者。
NASAのボイジャー計画、“E.T.(地球外知的生命体)” 探査にも関わっている。
また、パイプオルガン演奏で始める宇宙論講義や天文台で“真昼の星” を見せるなど文系・理系の枠を超えた教育の実践でも知られる。
「宇宙の不思議(PHP)」「宇宙はすべてを教えてくれる(PHP研究所)」「わかることはかわること(河出書房新社)」「夢みる科学(玉川大学出版部)」「からだは星からできている(春秋社)」など著書多数。

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