迦陵嚬伽 (かりょうびんが)

声咲く

美剱舞
〜迦陵嚬伽 (かりょうびんが)〜

炎のごとくに羽ばたく「二刀の歌舞」です✨

迦陵頻伽は、比類なき美声で歌いながら
常世に飛翔するという伝説の鳥。

さる洞窟の天井画で見あげた若き日から
その御姿に私は心を奪われてきました。

それは、私の剱舞の大いなる源泉のひとつ。

神器として生まれた両刃のツルギを
片刄ずつ両の手に分けて
まさに、♾の形に象徴される円環を基に舞います。

鳥の翼が持つメカニズムである
楕円の8の字運動も「♾」へと駈け上るパワー✨
彼らの飛翔は桜月流のメソッドにも息づいています。

その動きにあやかって二刀を繰り出したいと、
いつも願っています。

 

さて、実は
私は昨年「こどもみつるぎ」を
はじめると同時に
自分自身も舞楽を習いはじめました。

本来、舞楽には左舞と右舞があり
その両方を同時に習うことは基本的にできません。
しかしながら、大変不思議なご縁を頂戴して
童舞(わらわまい)の
左舞「迦陵頻」と右舞「胡蝶」の
両方のお稽古をつけて頂くことになりました。
(研究として、教えて頂いております。)

『源氏物語』にも登場する竜頭鷁首のお舟で
こどもが舞う「迦陵頻」と「胡蝶」。

日本最古と伝わる「こどもの舞」を
感じたいと、大学生の頃から願っていました。


舞楽 左舞「迦陵頻」の衣装

舞楽 右舞「胡蝶」の衣装

 

すでに、奈良時代に廃れてしまった宮中の内教坊は
雅楽や舞楽を女性がなす国家機関でした。
今ある宮内庁楽部は男性のみで構成されますが
奈良時代までは、男性と同じく女性の楽部があったのです。

もちろん、女性がなすべき歌や舞があったでしょうから
そのような機関が重要な役職として存在していたのですが
それは男性社会になってゆく中で消えてしまったのです。

卑弥呼など、女性の古代祭祀者としての巫女が
消えたのと同じ理由出会ったのだと思います。

女性の舞楽が文献にしか残っておらず
動きとしては残されていないことを憂いて
女性の舞楽会を立ち上げたさる御方がおられ、
その方の舞楽を継承された先生に出会うことができて
私は今、奇跡的にこの童舞を左右を教えて頂いているのです。

私は本当に大学時代から、ずっと
迦陵頻と胡蝶への興味が尽きませんでした。

でも、雅楽は通常では楽器を演奏できねば習えないこと
また、右舞左舞の両方はできないことを知っていましたから
研究者としてではありますが
こんな夢のような境遇が訪れるとは思ってもいませんでした。

舞楽のことはまた改めて
書きたいと思いますが
そのような流れがあり、
桜月流の『迦陵頻伽』にも
よき影響を与えられていると信じています。

それから、最後にもう一つ。
この迦陵嚬伽の世界観は、実は日本神話にある
木花咲耶姫へと繋がっています。

富士山の噴火をとめているのは
木花咲耶姫がその火口にツルギを
突き刺しているからだと…
祖母からずっと聞かされて育ちました。

桜の女神であり、
火を司り、
神御衣を織り、
酒を造る神である
木花咲耶姫は姉の磐長姫と共に
陰陽を対なしておられます。

共に結和し、
両神でひとつ。
また、永遠なるみずみずしい生命力の
表裏をなしておられるのです。
(私は、そう理解しております💫

『迦陵嚬伽』を歌舞う時、
私はこの姉妹神さまをひとつに
身に宿したいと夢みています。

両の手に持つ剱が
それを物理的に表してもいます。

真夏の屋外での舞は、猛烈な暑さで
火山を思い起こされるようでもありました🔥


山岸涼子展より

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